いつからだろう。僕は気が付かないうちに自分の発言に余計な見栄や、おためごかしや、作り笑いばかりを入れるようになっていた。
何のために?人のために?
いや、自分の保身のためだろう。悪く思われたくないという気持ちが先行しすぎてそうなってしまったのだろう。
そうしているうち、それらまやかしが本当に自分が思っていることだと感じるようになってしまった。自分が本当はどう思っているのか、正直を汲み取る前にまやかしが間を割って入るようになってしまっていた。
無人島には毎年行っているのにどうして今年このことに気が付いたのかわからない。だけどふとした瞬間に「俺はおためごかしばかり言っているな」と思う瞬間があった。そして、そんなことを言っているくらいなら黙っていた方がましだと思った。
自分の思っていることを正直に言う。一番簡単なことが一番難しくなっていた。もしかすると教員をやっている影響もあるのかもしれない。バカにされてはいけない、よい人でなければいけないという気持ちが毒になって、本当ではないことを言わせていたのかもしれない。先も言った。何かを言う前に反射的に虚栄心が割り込むようになってしまっていた。
おためごかしを言ったり、作り笑いをしたり、人を不必要にほめたり、それって本当には何も話してないのと同じことだ。無意味だし無駄だ。正直な気持ちでないのなら相手には何も伝わらない。ちゃんと自分の正直を見つめて取り出す努力をしなくてはならない。
その結果が面白くないのなら無理に笑う必要はないし、何も感じないのなら何も感じないと言えばいい。しゃべりたくないと思ったら黙ってればいいし、無理に話に入って誰かの気を引く必要はない。
そう思った。虚栄心の反射で答えるのではなくて、反射をやり過ごしてちゃんと正直を取り出そうと思った。そうした方がよっぽどていねいで親切だと。
その正直がほとんど黙ることだったとしても構わないではないか。黙っていても魅力的な人は何も損なわれずそのまま魅力的だ。