黒猫だった。名を「あっちゃん」と言った。
僕はでかすぎるせいか、猫には逃げられる性質だが、あっちゃんは逃げもせず、よくなでさせてくれた。
僕の『猫先生』のモデルにもなった。
最後はご飯も食べられなくなって、立てなくなって、死んだ。
友人から「あっちゃん、ご飯食べられなくなった」と聞いた時が、死が間際に迫っているのだと感じられて一番悲しかった。
火葬にする前日に会いに行くと、まるで眠っているようで、触ってみると手などとても柔らかく、毛もモコモコしていて、亡くなっているとはとても思えなかった。
悲しいというより、かわいいと思った。おかげで涙もほとんど流れなかった。
死んでなおかわいいとは、猫ってのはすごい動物だなあと思った。
バラを一輪だけ、あっちゃんに送った。本当は赤いバラがよく似合うだろうと思ったが、花屋になかったのでピンクのバラになった。
それはそれで、枕の色と良く合っていて良いと思った。