ソーリーベイベー

一非常勤講師の覚え書きです。天津飯をこよなく愛しています。不定期更新です。

夜を越えて

柔らかく温かな灰色の砂を食もうとした 無神経に無作為に伸ばされたその手を 君がつかんだ 僕は驚いて君を振り返ると もうすっかり旅支度は整っていて 僕たちの間には幼子が一人 君の指差した方角は真っ暗で 海とも空とも見分けがつかず しかし日を飲み込ん…

ちゃんとしようとするのをやめなさい

完璧などというものはあり得ないのだから。綺麗でなくていい。綺麗さよりは速さを。細やかさよりは勢いを。規律よりは奔放を。今はそのように思ってゐる。

仕事が昼までで終わる時

いつもこうなる。すきま時間を見つけることが大事だ。ゆっくりできる時間などどこにもない。時間を持て余していた若き日々は過ぎ去ったのだ。仮面をかぶって見つからないよう息をひそめてるすきま時間の正体を暴け。見ようとしなければそれは見えない。そい…

喪失感、あるいは豊かさの所在

僕の持つ喪失感の根源は、自然との分離であったと先頃分かった。僕らがもういらないと、捨て去ってしまったものこそ本当に必要なものではなかったか。失ってしまった者が、失われつつある若者に、更なる喪失を促している。そうして建てられた砂上の楼閣。根…

6行の詩

潜ろう 暗い水の中へ 深い海の底へそして息をするんだ 目を閉じて 耳をふさいで

社会科教科会議

それは救うつもりなのか、それとも殺すつもりなのか。そうして「できる」というまやかしを生徒に与え続け、実際には何一つできず「管理される」能力にだけ長けた廃人同様の人間を育む。友情ごっこ、勉強ごっこの果てに獲得するものは自分に対するおぞましい…

『別れ』

若い頃に書いたものです。

本当はもっと何もかも削ぎ落とした骨みたいな文章が書きたいと思う。だけど、いつも余計なものがくっついちまってだらしなく、気だるい。書くことに慣れるのもまた弊害だ。慣れは惰性を生む。骨だけでいい。骨だけで。

『虚しい隊列』

虚ろな言葉の隊列が今日も行く ものすごい数で ものすごい速度で今日も行くだけど誰も見ちゃあいないのさ語りかけることも知らず 語りかけられることも知らない 悲しい言葉の隊列 屍のような 亡者のような

『淡路島ドライブ』

僕と君で二人 海沿いを走る夕暮れ時の海は白とクリームみたいな青が入り混じるオレンジも入ってると 君は言った暗く静かに沈んでいく景色夕闇が僕らを抱きにきたんだ小さなライトをつけて その腕の中を車は走るここにはもう誰もいなくなってしまって世界は僕…