ソーリーベイベー

一非常勤講師の覚え書きです。天津飯をこよなく愛しています。不定期更新です。

兄の家に集まり、春ちゃん歩行器に乗る

9月19、20日は兄の家で我が一家の集まりがあった。ただし、父は仕事で来られなかった。

19日は13時に母を大和文化館に迎えにいくことになっていたので逆算して10時半に家を出ることにし、8時半ごろから活動を始めた。嫁さんが春ちゃんに離乳食をあげてる間に僕が掃除機をかけた。兄の家で過ごした後、母がウチに来るかもしれず、家をまがりなりにもきれいにしておくためだ。

春ちゃんは現在7ヶ月半であるが、生後5ヶ月ぐらいまでは掃除機の音を嫌がらなかった。嫁さんから聞いたところによると、掃除機の音はお腹の中にいる時に聞いている音に似て、赤ちゃんは安心するらしい。お腹の中って意外にHEAVYな環境なんだな…。
そんな息子が生後半年して突然掃除機をかけると泣くようになった。というか大きな音にすごく敏感になった。散歩に連れて出た時に近くを車が通り過ぎただけで過敏に反応する。ミキハウスのオモチャのラッパを吹けば必ず泣いた。ギターもまあまあの音量だと思うがギターを弾いても泣かず喜ぶので、特別ラッパの音に弱いのだろうか。嫁さんは元ラッパ吹きなのに…。

ところが19日は僕が掃除機をかけてもまるで意に介してない様子だった。慣れたのだろうか。ラッパもいけるかと思ったがラッパの音はまだ泣くようだ。願わくば嫁さんの実家に眠っているウン十万円のトランペットを大きくなった春ちゃんに吹いて欲しい。そんなことを嫁さんと話した。

春ちゃんの着替えやら哺乳瓶やら準備は全部嫁さんがやってくれて、無事10時過ぎに家を出た。念のためバウンサーも車に乗せることにしたが、結局ほとんど使わなかった。

兄の家に寄せてもらうのに手ぶらで行くのはさすがにマズイので日本酒を一本、イオンで買うことにした。イオンでは「三諸杉(みむろすぎ)」なる日本酒を購入した。なんでも生米を使った「菩提酛づくり」と呼ばれる室町時代に生まれた製法でお酒が作られており、以前飲んだ時に美味しかったのと、ラベルが少し変わっているので奈良土産にはこの日本酒をよく使っている。

イオンを出て、中川政七商店に向かう。母に敬老の日のプレゼントを買うためだ。「困った時の中川政七」と我々夫婦は勝手に呼んでいるが、中川政七商店は実際プレゼントに使えるものを多数取り揃えていて、中でもかや織ふきんは何枚でも欲しいぐらいに触り心地が良く、長持ちする。例に漏れず今回もふきんと、暖かそうな靴下を買って敬老の日のプレゼントとした。

母を大和文化館で拾い、学園前から精華台を抜けて兄の家に向かう。精華台には国会図書館があり、土地も丘のようになっていてのびのびしており、広い公園もあって大層良いところだと思った。精華台に住んでいる知人は学校の先生で、受け持っていた生徒と結婚したのだという話を運転しながらしたところ、母の知人にも先生と結婚した人は多数いると話題になった。母の話の中には現代なら捕まっているだろうなと思えることまでやってのけてる先生もいて、今も昔もロクでもない先生はロクでもないのだなと思った。先生をやることの「毒」は確かにあって、それはよくよく気をつけていてもいつのまにか己が独善的になってしまうという、恐ろしく強い毒だ。そして毒に侵されていることに気づかない先生の方が圧倒的に多い。つくづく恐ろしい職業だと思う。

高速を抜けて兄の家へ。高速を降りた後に見た、黄金色の稲穂を付ける田んぼの際で群生している彼岸花の赤が大層鮮烈で、そういえばこれまで39年間生きてきて、彼岸花をこんなに意識的に見たのは初めてだと思った。今年は特によく咲いているのだろうか。真っ赤なじゅうたんが田んぼに贅沢に敷かれているかのようであった。

兄の家に到着したのは14時半頃だった。着いてまずオリオンビールの変わり種を頂く。75beerとかいうもので高いビールの味がした。値段は普通らしい。
母がミスタードーナツを山盛り買って来てくれたのでめいめい一つずつドーナツをいただいて、春ちゃんにもミルクをあげた。母が春ちゃんにと服とたまごボーロ、それから小魚せんべいを買ってきてくれていて、おかし系は食べさせたことがなかったので、小魚せんべいを試しに食べさせてみたところ実に勢いよく食べきって、よほどおいしかったのか2枚目を求めるほどであった。春ちゃんは今は下の歯2本しか生えていないのだが、せんべいを溶かしながらバリバリと、下の歯と上の歯茎を使いながら上手に食べていた。

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小魚せんべいを食べる春ちゃん。自分で何かを持って食べたのはこれが初めて。

皆、ひとしきり食べたところでバーベキューの準備に入り、春ちゃんは眠って、母も車の移動で疲れたのか眠った。

兄の家は京都の少し田舎の山の中、街道沿いにあって、旧家をリフォームしながら住んでいる。両隣は空き地で片側は野っ原になっており車を自由にとめられる。広い裏庭もあって、そこでは火を使ってバーベキューをしても、どこからも何も言われない。時々サルが義姉の作る野菜を盗みに入るような、そんな家だ。

兄からバーベキューの火を起こしておいてくれと頼まれたので時計型のかまどで僕は火を起こし始めた。兄は植木屋をやっているので、剪定材を利用してまきはいつも豊富にある。が、その日は極太のまきしかなく、安定した火にするまで少し苦労した。結局ダンボールを大量投入して強引にその極太のマキに火をつけ、さらに炭へと火を移した。
兄はその間いっちゃん(兄の娘さん)を連れて敬老の日の挨拶回りに出かけた。兄一家も移住組であるが、地の人とつながる機会が頻繁にあるようで、その際に小さな子がいると何かしら話題が見つかって場が和んで良い、というような話を聞いた。

兄が挨拶周りから帰り、いよいよBBQが始まった。肉を焼くのかと思いきやまず出てきたのはサンマで、青光りして大変美しいサンマだった。その頃には炭がいこっていて、抜群の火加減でじっくり焼いたサンマは山の中でどうやってこんなサンマを手に入れたのかと驚くほど美味しかった。近頃気付いたことであるが、僕はどうやら焼き魚に目が無いらしい。サンマを肝まできれいに食べ、さらに嫁さんが食べ切れないと言うので嫁さんのサンマまでたいらげた。

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サンマってめちゃくちゃ美味しい。

春ちゃんはずっと眠っていたが肉もそれなりに焼いて皆の腹がある程度満たされたところで泣いて起きたように思う。夕方からの記憶が酒のパワーで断片的になっている。
春ちゃんの面倒を義姉が良く見てくれ、春ちゃんの気に入りそうなおもちゃもナイスチョイスで春ちゃんは始終ご機嫌であった。どうやら男と女の区別はもうついているらしい。女性に抱かれた時はやたら機嫌が良い気がする。ただ、母に抱かれた時は泣く率が高いように思うので、老若の区別もきっとできている。春ちゃんは世の男性の例に漏れず若い女性好きだ。

義姉が春ちゃんの面倒をたくさん見てくれたために、娘さんのいっちゃんがちょっとすねてしまい、眠たいのもあってソファから落ちて泣いたり、それからBBQで盛り上がってる間に泥棒猫が兄の家に入り込んで母のお土産のミスタードーナツを食べてしまう事件が発生し、ショックだったのかそれでいっちゃんはギャン泣きしてしまった。猫はサンマの匂いにおびき寄せられたのだろうか。盗みに入るのはサルだけではなかったらしい。
そのあと義姉はいっちゃんを寝かしつけにいった。

前後関係がいまひとつ明確でないが、その頃には月が顔をのぞかせはじめ、ほぼ満月のその月は兄の裏庭や、その奥に見える裏山を青白くほのかに照らしてくれた。風はなく、月は時折雲に隠れたり、雲から顔を出したりした。春ちゃんを膝に抱えながら皆で月を見た。

酔いもほどよく回ったところで先日頂いたはてなブログ賞のことを皆に話した。嫁さん以外の肉親にこのブログを読まれるのはとてつもなく嫌なのでサイト名や、具体的な賞の名は伏せたが、ともかく自分の書いたものが賞を頂いたのだと伝えた。
皆僕がブログをやっていることもほとんど知らなかったので少し呆気に取られたようであったが、それからは一様に喜んでくれた。兄から「お前はずっと書き続けているもんなあ。本当に良かったな」と言われたのが印象的だった。公に認められるのとそうでないのとはやはり違う、これで勢いがつけば良い、とも言われた。兄からほめられることは滅多にない。

母も僕が何かを書いていることは知っていたようで、特に中3からつけている日記のことは内容まで詳しく知っていた。母は人の日記を盗み見るような性格の人ではない。ではなぜ僕の日記をその内容まで知っているのか。
父の仕業だった。なんでも僕の机の引き出しから勝手に読み漁った僕の日記を、「おい、こんなこと書いてるぞ!」と嬉々として母に読み聞かせてあげたらしい。勝手に読まれていることは知っていたが、ヤロウ、ご丁寧に母に読み聞かせまでしていたとは…。
母から聞かせてもらった日記の内容は父にはずいぶん辛辣なもので、中学生だか高校生だかの自分はそんなこと考えてたのか、とその頃の自分を懐かしく思った。その日記は家が燃やされた時に焼失してしまい、もう読むことができない。

僕の受賞に、皆で乾杯していただき、BBQはお開きとなって家の中で第2ラウンドが開催されるはずであったが、家主の兄が早々にノックダウンしてしまい、残った母と僕と嫁さんでしばらく話したが、結局11時頃には皆床についたのではないかと思う。

20日の朝は春ちゃんの泣き声で皆一斉に6時ごろ目覚め活動を開始した。僕は少し二日酔いで20日はなんだか一日中眠かった。朝飯は兄貴がBBQの残りの肉とニンニクをふんだんに使ったレタスチャーハンを作ってくれた。とてもおいしかった。
それからNHK教育テレビを皆でダラダラ見て、兄から「お父さんといっしょ」もあるのだぞ、と教えてもらって月に2回ほどしかないその番組の録画を見せてもらった。なんかわかんないけどキャラがデカくて、いやそれで言うならいないいないばあっ!のワンワンとかもでかいんだけど、そういう意味でなくかわいくないデカさなのだ。シュッシュとポッポというキャラが出てくるのだけど、特にシュッシュの方がデカくて、目がキマッてて、そして圧がすごい。ちょっとしたシン・ゴジラ感がある。見た回はアイスクリームを誰が食べたのか犯人探しをする回で、太陽が溶かしてしまったんだというオチなのだが、その後ナレーションで「犯人は別にいたのです」と、やたら怖い終わり方をする回だった。
キャラでかいし話怖いし、子どもにはウケが悪そうだなあと思った。

ダラダラに飽きたところで義姉が歩行器を持ってきてくれて春ちゃんを乗せてみようということになった。僕は背骨を破裂骨折させた時にリハビリの一環で歩行器に乗ったことがあるので、ああいうのが出てくるのかと思ったら、赤ちゃん用の歩行器ってかわいいのだな。そりゃそうか。ハンドルがついていたり、ボタンを押したらメロディが鳴る仕様だった。

春ちゃんを乗せてみるとしばらくはあたりをキョロキョロ見回していたが、やがて足を動かしてバックし始めた。歩行器の高さが低すぎたのか、足が折れ曲がった状態で座っているので前に進むのは難しいようだった。前には進めないが春ちゃんは歩行器を気に入ったようで、キャーキャー言いながら嬉しそうに何往復も歩行器でバックした。

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まるでナメック星に浮遊するフリーザ様のよう(バックオンリー)。

もともとはこの「春ちゃんが歩行器でバックしたよ」、という出来事を書きたいがためにこの日記を書き始めたのだった。が、なんとこれ以上歩行器に関して書くことはない。そして5000字以上になったこの日記のメインはもはやそれでなくなっている気がする。

昼前に兄の家を出るつもりであったが、兄がせっかくなのでうどんぐらいすすって帰ってはどうか、とすすめてくれたので、うどんを食べて帰ることにした。今度はBBQの肉をふんだんに使った肉うどんだった。やはり美味しかった。
おかわりまでして満腹の状態で家路についた。おかげで帰りの運転は激眠だったが顔を引っ張ったりマッサージしたり変な顔をしたりしてなんとか持ち堪えさせた。嫁さんも春ちゃんも母も、皆グッスリと眠っていた。母は結局我が家には寄らなかった。


翌日母からプレゼントのお礼のメールが来た。大切に使わせていただきますとのことだった。靴下もふきんも良いものなので気に入ってくれたらこちらも嬉しい。遠くに出かけるのも、家族で集まるのも、開放的な場所で皆で食事をするのも実に久しぶりで心から楽しい連休になった。

今度実家の仏壇に『2021年2月3日』をお供えしに行こうか。