ソーリーベイベー

一非常勤講師の覚え書きです。天津飯をこよなく愛しています。不定期更新です。

モンゴル4日目

7月18日(火)

朝8時15分よりラジオ体操。8時30分から朝ごはん。

それから乗馬体験。その裏でうちの親方(僕の父)の催すモンゴルの草花を使ってのリース作り。

一応今回のモンゴルキャンプの野外活動責任者は父である。その父がモンゴルの草原、特に草花の可憐に咲いているのに大興奮して急きょリースを作ることになった。

僕もびっくりしたが、モンゴルの草原はただ草が生えているだけでなく、色とりどりのお花が咲いているのだ。それも雨の影響かこの2日で成長している気がする。日頃植物ばかり触っている父が興奮しないはずがない。

草原に咲く花。

少しは手伝わないとまずいだろうなと、乗馬に行きたい気持ちを抑えつつ父のリース作りを手伝った。時間が経つにつれ、リース作りがしたいという参加者が増えてきたので機を見計らってリース作りの場をフェードアウト。馬に乗りに行った。

馬は立て髪をきれいに刈られた鹿毛の馬だった。モンゴルの馬はサラブレッドと違って少し小さい。と言ってもずんぐりむっくりというほどでもなく、身長184cmの僕が乗ると少し小さいかな、というぐらいだった。

乗ったのはこの馬ではないが、モンゴルの馬はこんな感じ。

引き馬で草原をぐるっと周ってもらうのだが、鎧に足をかけた瞬間、引き馬をしてくれるモンゴルの人に「一人で乗るか?」と言われた(キャンプ地のモンゴルの人は少し日本語ができる)。いやそりゃ一人で乗ってみたいけど全く乗馬の経験がない人間が一人で乗っていいものかわからず「馬乗ったことないけどいいの?」と聞いたところ「それはダメだ」と言われた。

なんじゃそりゃ。経験者だと思われたのだとしたら、なぜそう思ったのか聞いてみたかった。

馬に乗って手綱を持った瞬間に馬が近くの草を食べようとして手綱が引っ張られた。ものすごい力だった。パワーを「馬力」で表す意味がよくわかった。

馬もそうだし牛やあるいは身近なところで犬もそうだけど、人間を遥かに凌駕する力を持つ動物たちがなぜ人間に従ってくれるのだろう。エサをくれるからと言うが、遊牧民の家畜たちは勝手にどこか草のあるところに行って草を喰み、夕方になったら帰ってくる。人間からエサすらもらってない。人間のもとを飛び出しても生きていけるのにどうして人間についてくるのか、すごく不思議だ。

馬に乗って、しかし馬のサイズもあるのだろう、それほど高いとは思わなかった。50cmほど目線が高くなったかなという感じだ。

馬に乗った時の目線の高さは250cmぐらいか。

馬が歩くとドシンドシンと、その体重とパワーが鞍を通して伝わってくる。経験したことのない感覚でとにかく馬よりもっと大きな何かに乗せられて運ばれている気がした。感覚としてはでっかいロボに乗せられてる感じ。楽しいと思った。きっと一人で乗れるようになったらもっと感動するのだろう。

モンゴルでは乗馬も普段の生活の一部だ。馬を引く人も堅苦しいことを何も言わない。ただ静かに僕の馬を引いてくれている。馬に乗るモンゴル人もただ生活のために、必要だからそうしているだけで、馬に乗ることを特別視していない。意識せずに、まるで歩くかのように馬に乗っている。それは馬の乗り方からもわかることで、裸馬に乗っているモンゴルの人を見た瞬間に、この人たちには馬に乗ることは歯を磨くより当たり前のことなのだと気づいた。
日本の乗馬とモンゴルの乗馬では考え方が違いすぎる。

乗馬中、刈られた馬の立て髪を撫でてみるとまるでタワシのようだった。そのすぐ脇の馬の首筋の肌はスベスベツルツルで、触っていてとても気持ちよかった。

30分ほど馬に乗らせてもらって、リースの方に戻ると、もうリースは出来上がる寸前だった。

リースをモンゴル側のキャンプの責任者に贈呈し、参加者を募って14時30分から山登りを開始した。

モンゴルの高山植物で作ったリース。

本当はもう少し遅く、17時ぐらいから登りたかったが、雲行きが怪しくなってきたので時間を早めた。

モンゴルも日本と同じで午前は天気が安定していることが多く、午後から崩れてくる。確か中学地理でモンゴルはステップ気候で雨は少ない、と教えてもらった気がするが、実際来てみると存外多い。

山登りの参加者は20名ほど集まった。

昨日とは違うルートで登ろうと直登ルートを避け、尾根筋を登ってみたが、どちらかと言うとそちらの方が急坂で、かえってきつかった。途中脱落する人が出るかと思ったが、70代の人までヒーヒー言いながら結局全員登れた。

黒雲に向かい登り続ける参加者。

山頂まで来ると昨日と違って風がものすごく、体ごと吹き飛ばされそうになった。遮るものが何も無いので天気が悪くなると風速が凄まじいことになるのだ。参加者の皆さんも寒い寒いと言い出して長袖を羽織り始めた。中にはアルミのシートを自らに巻きつけている人もいた。

記念撮影をし、すぐに下山。皆山を降り切ったところで雲がゴロゴロ音を鳴らし始め、雨が降ってきた。早めに登り始めてよかった。

20時より夕食。これももとは19時からだったのだが、今日が始まってから予定変更の嵐で何一つ昨日の打ち合わせ通りに運ばなかった。
モンゴルでは時間は太陽の位置を見て決める。だから「何時何分にどうする」というような日本人的概念はない。まあ、日本人が細かいことまで気にしすぎなんだな。

全てはおおらかに進んでいく。ここは日本ではない。モンゴルだ。
僕はこっちの感覚の方が好きだなあ。

次からモンゴルキャンプの注意書きにこう書いておこう。

「スケジュールは予告なく、直前に変更されることがあります。」