ソーリーベイベー

一非常勤講師の覚え書きです。天津飯をこよなく愛しています。不定期更新です。

モンゴル5日目

7月19日(水)

ほぼ昨日のリプレイ。2回目の乗馬体験で今度は一人で乗らせてもらった。引き馬でもロクに乗ってないのにいいのだろうか。しかし一人で乗りたいと言ったら簡単に「いいよ」と言ってくれた。
モンゴルでは人口と同じぐらいの頭数の馬がいて、生まれた時から馬が近くにいるから、乗馬は教えてもらうものではないそうな。幼い頃から馬に乗って、遊びながら覚えるのだろう。

一人で乗って、しばらくは馬も歩いてくれたのだけど、途中からどれだけ合図(こちらではチュー!と言いながら足で腹を軽く叩く)を出しても微動だにしなくなった。そしてその可愛い目でこちらをチラチラと見てくる。早く降りて、ということだろうか。

10分ぐらい試行錯誤してみて、他に待っている人もいたしどうしようもないので諦めて降りた。最初からうまくいく人なんていないことはわかっているけどもう少し一人で乗りたかったなあ。

それから我々は遊牧民との交流に向かった。

遊牧民は2つのゲルを家族5人で使っていた。一つにはベッドが置かれ、もう一つにはタンスや祭壇他、生活をするのに必要なさまざまなものが置かれてあった。

遊牧民のゲル。中は思った以上に広く、30人ぐらい入れる。
ゲルの中。

ゲルは中に入ると案外広く、外から見るのと印象が違う。遊牧民との交流の交渉はモンゴル側のキャンプの責任者が行うのだが、飛び入りで行っていきなり行うらしい。僕が行った遊牧民は一発OKだったが、他の班では断られていくつか遊牧民を回ったとのことだった。

ゲルの中では小学3年生ぐらいの女の子が牛のミルクをクツクツと煮て、ミルクの湯葉を作っていた。そいつを厚さ2cmぐらいの茶色の角餅らしきものに載せて食べさせてもらった。ミルクの湯葉は大変美味しかったのだが、その角餅らしきものが硬すぎて噛みちぎれず、ずいぶん苦労した。周りを見ると皆噛みちぎれないようだった。

これをクツクツ煮詰めてミルクの湯葉を作る。

後には遊牧民の方から頂いた馬乳酒も頂いたが、これは酒というよりひたすら酸っぱい飲み物という感じがした。ヨーグルト、というのも違う。マッコリとも違うが、強いて言うならマッコリの味を薄めたものを超すっぱくした感じ。聞くとアルコール度数は1%ほどで子どももよく飲んでいるらしい。

左のが馬乳酒。チーズの上に乗ってるのが湯葉
馬乳酒は牛の皮で作られた袋に入れられ、撹拌して作る。馬乳酒を作る季節が終わると皮袋は畳んで「洗わずに」しまわれる。発酵を促す菌が皮袋についているからだ。

モンゴルではビールと共にウォッカが愛飲されているようで、しかもこちらのウォッカはアルコール度数39%ほどで非常に飲みやすい。ビンの注ぎ口のところに工夫がなされてあって、トロトロと一気には出ないようになっている。その出方も手伝ってかついガンガン飲んでしまうのだが、このウォッカに馬乳酒を少したらすとさらに飲みやすいお酒が爆誕することに気づいた。マッコリの味はそのままに度数だけ上げた感じの危険極まりないお酒である。

モンゴルのウォッカ『チンギス』。

遊牧民のところで馬の乳搾りを見せてもらうつもりだったが、馬は皆どこかに出払ってしまっていて(このあたりもモンゴルである)、見ることはできなかった。他の班は見れたようで様子を聞かせてもらうと、仔馬に少し乳を飲ませ、乳が出始めたところで仔馬を離し、あとは人間が乳を絞るそうである。

僕はあと2週間ここにいるので、また見る機会があるかもしれない。

遊牧民との交流を終え、キャンプ地に戻ると一番最初に遊牧民との交流に出かけるはずだった班がキャンプ地に残ったままでいた。

どうしたのかとたずねると、バスが来ないとのことで、モンゴル側の責任者によると手配していたバスの運転手が突然電話に出なくなったらしい。そして、急きょ違うバスを手配したとのこと。なるほど、実にモンゴルである。

「機に臨みて変に応ず」は僕の好きな言葉だけど、モンゴルでは臨機応変にならざるを得ない。
30分後に、と言われれば2時間後だなと考え、2時間待ってこなければ4時間後かなと考え、4時間待ってこなければ半日後かなと考え、それでも来なければ今日はもう来ないかもしれないなと考える。来なければ来ないで他のことができるわけだし、それはそれで良い。そう考える方が自然だと思うようになったのは感覚がバグり始めてるのか。
「何時何分どこどこで」の通用しない世界は自らを解放してくれる。

今日の夜はキャンプ参加者の自己紹介が行われた。モンゴルの学生さんたちも少し混じってくれて、歌を歌ってくれたり、踊りを披露してくれた。

モンゴルの人は愛想笑いをしない、とモンゴルの初日に思ったのだが、この日モンゴルの学生さんたちはよく笑ってくれた。