ソーリーベイベー

一非常勤講師の覚え書きです。天津飯をこよなく愛しています。不定期更新です。

朝の散歩

今朝は春ちゃん(息子)がいつもより1時間早く、すなわち5時に目を覚ました。珍しく夜中に一度も目を覚さなかった。おっぱいをあげ、ミルクをあげ、それでも眠りそうになかったので春ちゃんを抱っこして6時前に散歩に連れ出した。

外はまだ朝日が登る前で、薄暗く、半袖半ズボンで出てみると肌寒かった。服を取りに戻ろうかと思ったが、マンションの下まで降りてしまっていたので、服は諦めることにした。

いつもの散歩コースを歩く。以前見た時よりイチョウの木にたくさん銀杏がついていた。春ちゃんは抱っこ紐の中でキョロキョロして、同じく散歩をしている人とすれ違うたび愛想を振りまいた。彼岸花はすっかり散ってしまって、また違う濃いピンク色の花が川沿いの土手に咲き、さらにはあちこちで芙蓉の花が大層豪勢に咲いていた。以前同じように芙蓉の花の隣を通った時、この豪華な花は何だろうなと、Googleのカメラで撮ってものを調べる機能を使って、初めて芙蓉の名を知ったのだった。秋に咲く花なんだ。

散歩をして、同じく散歩をしている人とすれ違う時は一応会釈のようなことをするが、もちろん会話はしない。朝の静かな時間に散歩しているのだから誰とも喋りたくない。春ちゃんに時々これはイチョウだね、とか今日は寒いね、とか僕一人でしゃべりかけるだけだ。散歩の途中、無作為に話かけてくるおじさんが出没するポイントがあって、そこは散歩コースから外すようになった。頼むから静かな散歩の邪魔をしないでくれ。
しかし、今日は向こうからやってきたおばさんに「今日は早いですね」と声をかけられた。僕はとっさに「あぁ、スミマセン」というような声にならない声のようなものを出して対処した。おばさんは春ちゃんに微笑みかけるとすぐに行ってしまった。

今まであまり意識したことがなかったが、そういえば早朝に0歳児を連れて散歩をしているお父さんを近辺で見たことがない。いやお父さんばかりかお母さんも見たことがない。つまり早朝は子ども連れがいない。5時、6時台に散歩してるのは初老をこえた人ばかりだ。そんな時間帯に抱っこ紐で赤ちゃん抱えた180オーバーのでかい男が散歩してたらそりゃ目立つに決まってる。どうやら春ちゃんごと覚えられてしまったらしい。

以前、春ちゃんが寝なかったので深夜2時ごろ散歩に出かけたことがある。散歩コースの川沿いでは大学生か何かが宴会をやっていて、恐らく立ちションベンに立ったであろう一人の男の子とすれ違った。彼は我々を見るやギョッとして、恐怖に顔を引きつらせた。丑三つ時の子連れ大男はさぞ不気味であったに違いない。

とかくそういうわけでどうにも我々は目立ってしまっていたようだ。もしかして他の人にも「ジジババしかいない時間帯に赤ちゃん連れて散歩している大男がいる」ということが認識されているのだろうか…。
面倒なことになったなあと、うんうん考えながら散歩を続けていると、東の山の先端から強烈なオレンジの光が差し込んできた。朝日が山から顔を出したのだ。
僕はコンビニまで歩いてコーヒーを買うつもりだったが、その一瞬しか味わえない朝の光の中をもう少し歩きたくて、コンビニに行くのはやめにした。

春ちゃんはその頃には再び眠ってしまっていて、オレンジの光が顔を照らすたび、まぶしそうに眉をしかめた。僕は春ちゃんの顔に手をかざして、そのまましばらく散歩を続けた。

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風呂上がりなど考えごとをしている時は手首をクルクル回すようになった春ちゃん