ソーリーベイベー

一非常勤講師の覚え書きです。天津飯をこよなく愛しています。不定期更新です。

保護猫の里親会に行ってきた

先日書きかけでラーメン屋の食レポと化してしまった日記の続きです。続きってか本題の部分です。
yoakenoandon.hatenablog.com
この前の日曜日、保護猫の里親会(保護猫を引き取ってくれる人を探す会)に行ってきた。義姉家族が見に行くというのでそれに僕と嫁さんも付き添いで行ってみることにしたのだ。

昼の1時半集合だったのでお昼にラーメンを食べる。ラーメンがおいしすぎたため先日の日記はここでつまづいてしまった。ラーメン屋を出るともう1時半を回っていたので急いで会場へ向かった。

体育館みたいなだだっ広いところが会場になってるのかと勝手に想像していたが、会場は普通のビルの会議室だった。猫は20~30匹ぐらいだろうか、それぞれケージに入って並べられていた。子猫ばかりかと思っていたが大人の猫もいて、少し子猫の方が多いかなという印象。
ケージにはその猫のプロフィール、性別年齢・保護した場所・ワクチン接種の有無・性格・引き取りの際の条件などが書かれてある。特に最後の引き取りの条件は高齢者不可とか単身者不可とか兄弟での引き取りとか他の猫と住ませてはダメとか色々あって面白いと思った。

義姉家族の姪っ子ちゃんたちは先に会場に入ってもうすでにお気に入りの子猫を見つけていたようで、僕たち夫婦も義姉家族に紛れて会議室内を回り始めた。実に色々な猫がいて、人気を博しているのはやはり人懐っこくて愛想の良い子猫。片目が無かったり、身体に不具のある大人猫のケージの前はガランとしていた。寂しそうにこちらを見る片目の猫に、少し悲しい気持ちになった。

姪っ子ちゃんたちも例に漏れずおもちゃでよく遊ぶ子猫に夢中になっていて、嫁さんも一緒に盛り上がっていた。僕はあまり子猫には興味がないので熱心ではなかった。

ふとその横のケージを見てみるとポツンとして誰も人が寄り付いていない。両脇のケージは子猫2匹セットのケージでやんややんやの大盛況であるのに(姪っ子ちゃんたちはその片方にご執心)、そのおこぼれさえもらえない、ものすごい不人気猫のケージである。やはりどこか体に悪いところがある子なのだろうか。気になってそのケージのプロフィールを見てみると特に悪いところはないようで、体は健康そのもの、むしろ健康すぎるぐらい体が大きく、年齢は3才~4才のオスの猫(去勢済み)であった。性格の欄には「ビビりだけど人懐っこい、猫にも人にも優しい猫です。」と書かれてあって、なるほどケージの一番奥でうずくまったままこちらを向こうともしない。呼びかけにも反応せず、目をつぶったままじっと動かず小刻みに震えているようだった。こんなにでかい図体(後から聞くと里親会の中で一番大きかった)してるのに怖がっているのか?僕はおかしくてクスクス笑った。
そりゃ人気が無いはずだ。ただでさえ大人猫は人気薄なのにどんな顔してるのか見せないほどの愛想無しなら誰も興味を示さないに違いない。ほら、もっとがんばらないと誰もお前をもらってくれないぞ。

生きるのが下手で、不器用な猫だと思った。だけどしばらく眺めているうちに僕はその不器用な猫がとっても好きになった。
人間なんてどうでもいいから帰らせてくれ、俺はこんなとこにいたくないんだ。そんな声がピクリとも動かないでかい図体から聞こえてきそうだった。

「向かない、俺は絶対そっちは向かないぞ」そっぽを向いたまま鼻先をケージにめり込ませる猫氏。首についてるカラフルなフワフワがかわいかった。

なんて猫らしい猫だ。

僕は嫁さんに「この猫めちゃくちゃ可愛くない?」と聞いてみたが嫁さんはちょっとだけケージを覗くとすぐに姪っ子ちゃんたちに連れられて他の猫を見に行ってしまった。無愛想すぎてちょっと見ただけでは何も分からなかったに違いない。といっても僕もその猫の側面しか見せてもらってないのだが。
僕もまだ全ての猫を見たわけではなかったのでとりあえず全て猫を見て回ることにした。

猫の顔って大体同じなのかと思ったら結構違いがある。ハンサムだったり目と鼻が離れていて間延びしていたり細面だったり眉毛があったり。あの不器用な猫はどんな顔しているのかな?他の猫を見ている途中もあの図体のでかい、岩のように動かない猫が気になって仕方がなかった。

一通り回ったところで嫁さんから「気に入ったのおった?」と聞かれたので、もう一度嫁さんをあの不器用猫のもとへ連れて行った。
嫁さんの呼びかけにもピクリともしない。スーンとしたまま鼻先をケージにめり込ませている(体がでかすぎてケージに収まりきってない)。
「な?かわいいやろ?」
そう聞くと嫁さんもその猫の魅力に気づいたらしく、二人で夢中になって何一つ動かない猫を眺め続けた。不器用猫の前には僕たちだけで、その光景が異様だったのか、シェルターでその不器用猫を保護している方が「よければ触りますか?」と声をかけてくれた。
この猫触れるのか?僕には甚だ疑問だったが、ケージを開けその保護者の方が声をかけると「ニャー」と言いながら不器用猫はこちらを向いた。とってもハンサムな猫で、少し怒っているようだった。
里親会に来るのは大嫌いなようで、その日も油断していたところをケージに入れられて連れてこられたそうな。車の中でも鳴きっぱなしで、会場に着いてからは僕が見たようにブスッとしたまま動かなくなったらしい。とっても表情豊かなんですよ、保護者の方が説明してくれたが、うむ、それは見ていれば分かる。こいつは今明らかに怒っている。

「俺は今怒ってるんや!」表情で怒りを訴えかける猫氏。しかし、その表情が首のフワフワとちぐはぐで、余計にキュートに見える。

だけど嫁さんが恐る恐る指を伸ばすとかみつくこともひっかくこともなく、スンスンと指の匂いをかいだ後素直に嫁さんになでられるがままとなった。それで嫁さんはすっかりその猫の虜になってしまったようだ。
僕もなでさせてもらって、こいつは今不機嫌だけど暴れたり、何かを傷つけたり、そんなことは決してしない猫なんだと分かった。猫にも人間にも優しい、プロフィール通りなんだろう。途中からは姪っ子ちゃんたちも参加してその不器用猫をなでまくっているとお腹を見せて甘える素振りまで見せた。
何やこいつは、可愛すぎるやないかい。
大きくて、優しくて、大人しい猫。それは僕たちの理想とする猫だった。

義姉家族はその里親会で猫を飼うことを決意したらしく、ハチミツ色の愛想の良い子猫を引き取るための面談を申し込んだ。しかし、結果はダメだった。
理由は住んでいるマンションが「一応」ペット禁止のためだ。無論そのマンションにはこっそり、あるいは大っぴらにペットを飼っている人もいる。規約上はダメだが、実際は違うということだ。だからマンションがペット禁止だから、という理由で引き渡せないのは少し厳しいような気もしたが、引き渡す側からすれば当たり前のことなんだろう。せっかく保護して大事に育てたのに、その猫が引き渡した先でつらい目に会うようなことがあっては何もかも水の泡だ。いい加減な人には絶対に渡せないという強い意志を感じた。
姪っ子ちゃんたちはハチミツ色の子猫との新しい生活が手の届くところにあったのに、その夢が露と消えて、帰りには落ち込んで涙を流していた。

僕たちの方はというと、義姉家族が面談中もずっと不器用猫の前にいて、そうしているうちに嫁さんが本気でその猫を飼いたくなってしまった。
「里親会なんかに行っちまったら本当に飼いたくなっちゃうんじゃないの?」
里親会前に話していたことが現実になってしまったのだ。最初は僕も「いやそりゃまずいっしょ」と嫁さんをなだめすかしていたが、不器用猫が本当に大人しく、おもちゃにも反応しないような猫なので(おもちゃを追いかけず、おもちゃが来るのを待つ奇抜なスタイル)、この猫なら色々大丈夫かもな、なんて思い始めて、保護者の方もノリノリで薦めてくるもので、ついに僕もほだされて飼ってみようか…となってしまった。

が、その夢も叶わなかった。

僕らの住むマンションも「一応」ペット禁止のためだ。エレベーターの中でよく小型犬と会うが、ダメなものはダメだ。その旨保護者の方に言うと「環境を整えてからまた来てください」一蹴されてしまった。

帰りの電車では嫁さんもとっても落ち込んで鼻をグズグズ言わせていたが、それは泣いているわけではなく、ただの猫アレルギーだった。


いやそもそもダメじゃん。