ソーリーベイベー

一非常勤講師の覚え書きです。天津飯をこよなく愛しています。不定期更新です。

僕はどこへ行こうとしているのか

ここではないどこかへ、そう常々思っていた。
もっと豊かで、自由で、楽しいところがあるはずだ。こんなところは抜け出して、切り離して、捨ててしまって、そこへ早く行きたいと、そればっかりを思ってきた。そして、僕にはいつかそれができると思っていた。
僕はもっとすごくなれる、素晴らしい人生に到達できる。


今日学校から学校へ移動する際、電車の中で嫁さんの作ってくれたおにぎりを食べながら、ふと、このままじゃいつまでたってもそこへは行けないんだと分かってしまった。確信したんだ。そんなことはあり得ないと。

もしかするといつかそこへ行けることもあるかもしれない。だけどそこは必ず今いる場所と地続きであるはずだ。今と全然関係のない場所へ、ポーンと空を飛ぶようにして行けるはずがない。それなのに僕は空を飛ぼうとしていた。
今を捨てて、無駄にして、犠牲にした先が理想郷だなんて、そんな馬鹿な。逃げ出したその先は夢想の墓場だろう。そこでもきっと同じことを思うさ。ここではないどこかへ、と。

そして、いつかそこへ行ける、なんて考えてる間は多分永久にそこへ行けない。
未来のために現在を消耗するという考え方自体が不健全で、非現実的なのだ。思い返してみれば僕がそういう考え方をしているとき、何かを成し得たことはない。どこにもたどり着いたことはない。
何かを成し得る時はいつだって今現在と必死に向き合っているときだけだ。いつかのことを考える余裕などどこにもない。そんな暇など。

未来のことばかり夢想して、ひどく集中を欠いている者に、一体何ができる。


未来のことなどどこかへ吹き飛ばしてしまって、今のことを考えようと思った。今をもっと満足に、充実させることを。立脚点を未来ではなく現在に置こう。僕はここで生きているんだ。


いつかそこへいける時は、きっと、もうすでにそこへ到着してしまっている時だけだ。