ソーリーベイベー

一非常勤講師の覚え書きです。天津飯をこよなく愛しています。不定期更新です。

労働とは手間賃

よほどクリエイティブな仕事を除いて、ほとんどの労働とは手間賃ではないかと5年ぐらい前から思うようになった。
誰でもできる、しかし面倒でやりたくない。なので手間賃を払って誰かに代わりにやってもらう。
すなわち労働の発生だ。

ゴールデンウイークの幕開けは実家(一軒家)の母からの呼び出しで始まった。なんでも最近さら地にしたお隣との境の庭が沼のようになっているので見に来て欲しいというのだ。
あらかた排水口が詰まってるだけだからどぶさらいをして終わりだろうと、ゴールデンウイーク初日に兄貴と僕で様子を見に行った。

塩ビパイプをたどって排水の流れを確認する。家の周りの排水は一カ所に集められて家の外に流れていくのだろうと僕も兄も思っていたのだが、塩ビパイプに長い割竹を差し込んでみたところ途中で堅いものにぶち当たった。明らかに泥や落ち葉の類ではない。地面を掘りまくってパイプを全て出してみたところ、なんと排水の流れはお隣に向かうように斜めになっていた。

いやなんでやねん。
写真。上側のパイプがブロック塀の下をくぐり、お隣さんへ向かっている。

誰が、何の目的でこんなややこしいことをしたのか。昔は隣と排水溝を共有するのが普通だったのか?
ともかく、排水パイプの延長線上にあるお隣さんが家を潰してさら地にしてしまったため、ついでに我が家からつながっている地下の排水パイプもつぶしてしまい、排水の出口が無くなって実家とお隣の境が沼のようになっているのだった。

正直めちゃめちゃめんどくさいことになったと思ったしめちゃめちゃ帰りたかったが、兄貴と相談の上、新しく排水ルートを二人で作ることにした。

青色が新しく敷いた塩ビパイプのルート

やることは簡単で地面を掘る、塩ビパイプを敷く、パイプが若干傾くように水平を見る、この三つだけだ。微妙な調整を繰り返して排水が皆一カ所に集まるようパイプを敷いてきたが、なんと最後の最後で地面を掘っているとガス管と水道管にぶち当たってしまった。
なんてこった。ガス管の上を通せば水平が逆に傾き水が逆流してしまう。ガス管の下を通せば家の外につながる排水口よりパイプのレベルが下がってしまい、排水の出口が無くなってしまう。どうすりゃいいのこれ?

八方塞がりの図。

その時点ですでにゴールデンウイークを2日消化していた。つまり泊まり込みで作業を行っていたのだ。
辺りは薄暗くなってきてこのままいくと3日目に突入しそうだ。もうイヤだ、もう帰りたい、その必死の思いから来た閃き、というか苦肉の策を僕は兄に伝えた。

水を逆流させることはできないのでパイプはガス管の下を通す。最後の部分は排水口に水を流すため(排水のレベルを上げるため)に溜まりを作り、周りをセメントで固める。多少は排水がパイプに戻るだろうがそれはご愛嬌ということでおふくろに勘弁してもらう、という策だ。
兄貴も早く帰りたかったのだろう。「それや!」というなり早速作業に取りかかった。

最後はパワープレーのごり押し。

かくしてなんとか2日間で僕と兄貴は新たな排水ルートを作り上げた。疲れた、激しく疲れた。しかしまあなんとかなるもんだ。
その後排水はうまくいってるようで一安心である。
パイプの最後に逆止弁を付けても良かったな、とこの日記を書いていて思った。今度実家に寄ることがあれば取り付けよう。



家の排水を直すことも、高校の非常勤講師をやることも、ブログを書くことも、速さや精巧さということを除けば(それが仕事においては大事なんだろうけど)、ほとんどのことはきっと手間さえかければ誰でもできるのだ。あとはやろうとするか、しないかだけだ。
労働とはそういうものだと僕は思う。

自分でやってみると諸々のことは案外楽しい。
それで手間賃をもらえるなら尚更だ。

全体図。排水の最後をガス管が見事に邪魔しているのがお分かり頂けるだろうか?このあとお車代という名目で母から手間賃を頂いた。