ソーリーベイベー

一非常勤講師の覚え書きです。天津飯をこよなく愛しています。不定期更新です。

僕の好きな言葉

「言葉というものは学べるようでいて、ない者には永遠に身につかぬのだ」(漫画『蒼天航路』13巻、曹操の言葉)

僕は今さまざまな言葉を扱う会社で働いている。英語をはじめ、20数カ国の言葉を扱い、会社の関係者には何ヶ国語も話せる人間もいる。

そんな会社にいながらいつも思う。
だから、なんなんだろう?

その会社で扱っている「言葉」とここで曹操が言った「言葉」はまるで別物だ。数カ国語を操り、世界の人々とコミュニケーションが取れるようになったところで、曹操の言う「言葉」には到達できない。それは0を連打しているのと同じことで、言葉の深遠には永久に到達できないのだ。


曹操の言う「言葉」は真実を穿つ力のことだ。事象に穴を開け、その裏に隠れている真実を、リアルをえぐり出す。その作用のことを言っている。

言葉は誰でも、何歳からでも学ぶことができる。どこかで聞いたその言葉は半面真実で半面は真っ赤な嘘だ。
世界中の人と日常のコミニュケーションを取る程度、つまり多種の言葉を学ぶ限りにおいてその文句は正しい。言葉の表面をなでまわす限りにおいては。
しかし、どのように学んだところで言葉の裏面、すなわち真実を穿つ力を獲得することはできない。それは学べるものではない。言葉の深遠を操る能力ほど天賦の才が必要なものはないのだ。無限の様を呈する言葉の世界から事象を直撃させる言葉をつかみ取る、そうして人の心を打つ、その能力とはある種の直感、神通力と同じ種類のものだ。

そうでなければ多くの詩人は苦しまなかったろう。そうでなければ多くのブロガーもまた苦しまなかっただろう。

その苦しみに比べれば何ヶ国語を話せようが、そんなのはものの数ではない。どっちだっていいことだ。


蒼天航路』の曹操のこの言葉もまた、言葉そのものの真実をシンプルにえぐり出していて、僕はとても好きだ。

彼もまた詩人の一人。