ソーリーベイベー

一非常勤講師の覚え書きです。天津飯をこよなく愛しています。不定期更新です。

裏江の島日記

近頃の自分のブログは内向的に過ぎたと反省したので、なんでもないただの休日を描く。

湘南に住み始めて1年9ヶ月が過ぎた。土地にも随分慣れて、休日の人の多さには辟易するが、やはりこの辺りは良いところだなと改めて感じている。近頃子育て世代を中心に人気らしいがそれも分かる。個人的には海が近く、海に行けば気持ちがスッとなるところが気に入っている。なおサーフィンには全く興味がない。サーフィンしている人も、もちろん波に乗るのは楽しいんだろうけど、キラキラしてる海にチャプチャプ浮いてるだけで楽しいんだろうなあと、日常生活でサーファーをよく見るようになって思った。むしろそっちを求めているのではないかと。

朝4時台の江の島。この時間から海に浮かんでいる人がいる。

こちらに移り住んで、我々家族が何かあれば時間潰しに立ち寄る場所がある。江の島だ。特に理由もなく、なんとなく江の島に立ち寄るその行為を我々は「江の島しばき」と呼んでいる。江の島をしばいた回数は100には満たないだろうが、50は間違いなく超えている。
立ち寄ると言っても車なので、橋を渡って江の島の奥まで進み、ヨットのいっぱい置いてあるところをぐるっと回って江の島を出るだけで、特に散策するわけではない。だが、それだけで少し気持ちが楽になる。

そんな具合なので江の島を歩いたのは多分5回ぐらいしかない。それでも江島神社も行ったし、サミュエルコッキングの庭も見たし、夜の灯台にも登ったし、一通り江の島のことは知ったつもりだった。

それでもうこれ以上歩く必要もないと思って、近頃は江の島まで行っても車から降りることも無かったのだが、つい最近はてなブログで江の島を散策した人の日記を見た。多分はてな公式がピックアップした記事で、はてなトップページに載ってたと思う。
読んでみて驚いた。江の島にはまだまだ僕の知らない裏面があったのだ。


裏江の島に足を踏み入れるべく12月某日、我々一家四人は50回以上訪れている江の島に降り立った。裏江の島の入り口少し入ったあたりまでは11月末に嫁さんのご両親が来られた時に様子を見ていた。その時は随分先が長そうだからということで、富士山が綺麗に見える坂の途中で引き返したのだった。

江の島のお店がずらっと並んでいる坂(弁財天仲見世通り)を登っていき、江島神社の鳥居のところまで来ると右手に地図がある。

右手にカップルがいてなかなかその場を立ち去らなかったので変な角度での撮影になった。

上記地図での30番までは僕は知っている。今回は13番の道を通り、45番まで行こうという目論見である。つまり僕は江の島の半分も知らなかったのだな。

階段などないだろうと勝手にタカをくくっていたので、2人の子供がグズった時用にベビーカーも転がして行ったが、これは割と後悔した。これから裏江の島を散策しようという人にはあまりベビーカーを持って行くのはおすすめできない。途中腰が爆発しそうになる。

先の地図のところを右手に曲がるといきなり急坂で、長子の春ちゃん(男・3歳)が抱っこと言い出した。仲見世通りで体力を使ってしまったのか。それにしても早い。もう少し頑張ってくれ。2歳の頃はあんなに歩くのが好きだったのに。3歳になって全然歩かなくなった。でも、僕も中学生の時分、部活帰りはどこでもドアが欲しいと心の底から思っていた。彼も同じような気持ちなのだろうと春ちゃんを抱っこし、次子のRYOちゃん(女・2歳)はベビーカーに乗って嫁さんが押して歩いた。急坂を登り切ったところでベビーカーを押す方がきついと嫁さんが申し出たので役割を交代した。ここから確か春ちゃんは歩き始めたように記憶している。

坂道を登り切ったあたりで人家が見え、こんなところに住む人もいるのかと思っているとたくさんのお店が見え始めた。ちょうど先の地図で言う34番のあたりだ。人もまばらでゆっくりしていて、それでいて食べ物屋さんも色んな種類のお店が並んでいる。こっちの方が表より楽しそうじゃないかと大変びっくりした。裏江の島には岩と神社しかないと思い込んでいたのだ。ただ、欠点としては裏江の島が本格化するあたりで階段も本格化する。子供の乗ったベビーカーを連打で持ち運ばなければならなくなったのもここからだ。

お店を眺めつつ裏江の島の先端を目指そうとしたところ、春ちゃんがお腹が空いたと言い出した。先に先端まで行って帰りにご飯が良いかな、と思っていたが時刻は11時30分。嫁さんとの話でこれぐらいの時間に入っておいた方が人も少なくて良いのではないかとの判断になって、ちょうど話をしていた右手にあるイタリアンぽいお店に入ることにした。お店の名は「cafe madu」。嫁さんは何かこの店知ってるかも、と言っていた。実は裏江の島経験者なのか?

店は券売機でメニューを選ぶ形式で、中に入って左手にキッチン、正面には湘南の海を一望できる大きな窓があり、窓とキッチンを仕切る壁との間の空間に4人テーブルが10ほどあったのではないかと思う。嫁さんの予想した通りまだそんなに人は入っておらず、運良く窓際の海がよく見えるテーブルにつくことができた。

cafe maduのメニュー。
良い席につけた。

ここで子供達にはしらす丼のセットを、大人は期間限定のスペシャルメニューを注文した。スペシャルメニューは確かローストビーフの丼とビーフシチューのセットだった。湘南に移って、そんなに美味しいと思える店と出会ってなかったのだが、ここは美味しかった。しらす丼もたっぷりで3歳と2歳の子が分け合って食べるには十分な量だった。食べてる途中、トンビがガラス越しの目の前の木にとまった。ご飯を探しているようだった。

cafe madu窓からの眺望。

お昼を食べ終わり店を出るや否や、春ちゃんがアイスクリームが食べたいと言い出した。なぜ?君は今ごはんを(大人のごはんについてきたデザートも)食べたばかりではないか。と思ったらcafe maduの表にはソフトクリームののぼりが出ていて、ソフトクリームの他にクレープも店先で売っているようだった。こんなところでまごまごしていては永久に裏江の島を攻略できないと思ったので、裏江の島の先まで行って、帰ってきた時に食べようと春ちゃんと約束してとりあえずその場を離れた。このあたり、少し話を聞いてくれるようになったところに春ちゃんの成長を感じた。

cafe maduからまだしばらくは色んな食べ物屋さんが並んでいて、その並びを抜けると神社が見えた。神社手前右側には通路が走っており、通路入り口に何かよくわからない石と、その奥にひこばえのたくさん生えた木。確か石は昔とんでもない力持ちが持ち上げたというような石だったと思う。ひこばえのいっぱい生えた木はわからない。鶴岡八幡宮の大銀杏みたいに雷が落ちたのかしらん。通路はスルーして神社へ。

スルーしなかった人もいる(春ちゃん)。

神社は江島神社。表にある江島神社を辺津宮、裏は奥津宮と呼ぶらしい。奥津宮にはどこから見てもこっちを睨んでいるように見える八方睨みの亀とやらが描かれているらしく、しかし壁にもどこにも亀がいないので一体どこにいるのかと思ったら賽銭を入れる社の天井にいた。嫁さんが「この亀可愛い!撮っといて!」と言われたので何枚か写真を撮った。興奮する嫁さんを見て、嫁さんは実は亀が好きなのではないかと思った。LINEでも見たことない亀の絵文字使ってるし。後から改めて自分で亀の写真撮ってたし。

奥津宮。
八方睨みの亀。確かにかわいい。
これは裏江の島のどこかで嫁さんが撮った亀の手水。やっぱり亀好きやん。

奥津宮の横にはよくわからない龍の像を冠した洞穴があったので一応入って、11月末日に出した漫画がどうか受賞するようにとお願いした(奥津宮でもお願いした)。だけど何の洞穴だったのかはよくわかっていない。金運の神さんとは書いてた気がする。

漫画賞お願い!

そこから道は左右に分かれて、左手は恋人の丘みたいな雰囲気だったので、関係の無い我々は無視して右手に進んだ。すると今度はオシャレではない古風な雰囲気の料理屋が現れはじめ、その先に急角度の下り階段が続いた。パッと見て、これまでのようにベビーカーを持ち上げて上り下りできる階段の角度ではないと判断したので、ベビーカーは階段脇のどこかに置くしかないなと考えていたところ、古風な雰囲気の料理屋の女中さんから店の脇にベビーカー置いといていいよ、と声をかけてもらった。お言葉に甘え、ベビーカーを置き我々4人は階段を下り始めた。すぐ終わるかと思った階段は無限に続いた。

子らをなだめたりすかしたりして、なんとか無限の階段を下らせた。下り切る直前のポイントからは湘南の海に浮かぶ富士山がとても綺麗に見えた。階段の先からは岩場に出られるようになっていて、仕切りも特に無かったので海にも出られるようだった。が、岩場に出てしまったが最後、岩場の凹部分に溜まった海水で子らは遊び始め、あるいはその先にある海に気を引かれ、30分は間違いなく身動きが取れなくなることが予見されたので、岩場は見なかったことにして、僕と嫁さんはさっさと洞窟に続く橋に歩を進めた。

洞窟への道。右の階段から岩場に出られる。

洞窟の前には料金を知らせる看板がかかっていた。
え、金かかんの?
そんなに洞窟に興味があるわけではなし、金かかるならやめようかと一瞬思ったが、僕らはともかく子らは入ってみたいだろうということで、皆で入ることにした。子供は2歳と3歳で入場無料だったし。

洞窟に入ってしばらくして、沖縄と高知で入った洞窟のことを思い出した(高知のは空海が住んでたとかいう洞窟)。裏江の島の洞窟に入って初めてわかったが、僕はどうやら洞窟が苦手らしい。閉所恐怖症というわけではなく、あの洞窟独特のにおいが苦手なのだ。ずっといると気持ち悪くなってくる。
洞窟は少し進むと左右に道が分かれ、確か左が洞窟1、右が洞窟2となっていたので、左にとりあえず進むと受付のようなものがあり、そこでロウソクに火のついた手燭を渡された。この先暗いからということで、てっきりまた金がかかるのかと思ったが、ロウソクは無料だった。子供たちにはロウソクではなく、手燭に似た電灯が手渡された。

洞窟の中、そして手燭。

確かにその先洞窟はすぼまっていて暗く、道はさらに左右に分かれ、それぞれの道が狭いために行列ができていた。僕と春ちゃん、嫁さんとRYOちゃんペアでそれぞれ左右両方の道を攻めたはずなのだが、何があったのか今一つ覚えていない。上人の像やら何やらがあった気がする。日蓮だっけ?覚えていない。多分本格的に気分が悪くなり始めていたのだと思う。左のすぼまった道の先は確か富士山まで地下道が続いている、みたいな話だった。んなアホな、と思ったが、本当だったらワクワクする話だ。

洞窟1の散策を終えて手燭を返却し、洞窟2に向かうかどうかというところで嫁さんから「子供らも疲れてるしもうええか」と提案があった。心底ホッとした。多分誰より洞窟を出たかったのは僕だったのだ。洞窟1と洞窟2の境目にある海が見えて風の通るところで少し休んで、我々は元来た道を引き返し始めた。洞窟を出ると富士山は頭の部分を雲に隠されてしまってはいたが変わらずきれいに見えたので、無限階段の始まりにある良いポイントで家族でいっちょ写真を撮ろうかという気概を見せてみたが、そのポイントからテコでも動かぬ老カップルがいて我々はいとも簡単に写真撮影を諦めた。こちとら疲れとるんや。

無限階段を下り切ったところから見える富士山。

そして無限に下りてきた階段を無限に上り始めた。子らは疲れ切っていて、まったく自らの足で階段を上ろうとせず、僕と嫁さんで一人ずつ抱っこして無限階段を上りきった。嫁さんがめちゃめちゃ大変そうで(春ちゃんで15kg以上、RYOちゃんも14kgぐらいあるので…)、もう一度裏江の島に来たとしても、もうこの階段を下りる必要はないなと思った。

無限階段途中にある民家にいた猫を見つけ夢中になるRYOちゃんと、しばし休憩する両親。

階段を必死のパッチで上り切った我々はcafe maduで約束のソフトクリームを一つ頼んで4人でかじりあって食べた。一つ丸々、というわけではなかったがそれでも春ちゃんは随分満足したようだった。

裏江の島は全体にまったりとした雰囲気で、表に飽きた人が来る分にはいいけど、裏に2回来る必要があるかと問われればわからないと答える。もう一度あの八方睨みの亀を見に行っても良いかなと思うし、cafe maduのクレープもちょっと食べてみたい気がしている。
ただ、奥津宮の先の階段だけは子連れではもう下るまいと決意している(2回目)。

最後に、4人でかじりあって食べたアイスクリームが効いたのかどうか、この日記の1週後に僕はインフルエンザになり、さらに嫁さんもインフルエンザっぽくなったことを伝えてこの日記を締めくくろうと思う。