ソーリーベイベー

一非常勤講師の覚え書きです。天津飯をこよなく愛しています。不定期更新です。

クリスタでアナログ原稿をスキャンする際の失敗事例

以下、久々のお役立ち記事であるが、役に立たない人には何一つ役に立たないので、いつもの日記を期待している方はこのままそっとウィンドウを閉じてください。

経緯としては、漫画をアナログで描いていてトーンとベタの作業がめちゃめちゃ苦痛になる→iPadでお絵描きすれば色々楽なのでは?→金貯めてiPad買うも(昨年11月)iPadでのお絵描き何一つ楽しくない→下書き、ペン入れまでアナログでやり、トーンとベタはiPadでやる方法があると知る

という具合で、とにかく嫌いなベタとトーンで少しでも楽するためにA3まで読み取れるスキャナーまで先週買ったわけだが、アナログ原稿のスキャンの段階に色々と罠が隠されており、つまらない失敗を重ねてしまったので備忘録として以下の記事を残す。結局のところクリスタ公式の記事をよく読んでその通りにやればいい、というだけの話だったのだが、そこに行き着くまでに12時間ほど試行錯誤を繰り返した。
なお、A3まで読み取れるうちのスキャナー(複合機)はbrotherのmfc-j7300cdwである。

激デカ複合機がやってきたことにより、完全無欠の漫画家要塞と化した我が部屋

失敗①JPEGで原稿を読み取ってしまう
うちのbrotherの機能にスキャナー本体の操作だけで直接iPadのアプリにデータを飛ばせるもの(scan to アプリ)があり、解像度も600dpiを選択できたので、何も考えずにそいつでスキャンを行うも、その機能ではスキャンの形式が選べず、JPEGに固定されてしまうことに気づいた。
今度の9月の小学館新人コミック大賞に36Pの作品をぶち込もうと思っているのだが、デジタル投稿での推奨形式がtiffもしくはpsdで、あくまで推奨なのでJPEGでもいけるのかもしれないが、この時はtiffじゃなきゃいけないと思い込み、tiffでスキャンする方法を模索し始める。

色々調べたらJPEGでのスキャンは印刷的にちょいまず、みたいな記事も出てきたが何がまずいのかはいまだによく分かっていない。

失敗②モノクロでアナログ原稿をスキャンしてしまう
これも新人賞の規定に「モノクロ2階調」と書いてあるので、モノクロじゃないといけないと思い込みスキャンの設定をモノクロにしてスキャンを行ってしまう。
結果、微妙に薄くなっている線や、細い線に途切れやかすれが生じる。しかしこの時はtiffでちゃんと読み取れば問題は解決すると思っていた。クリスタ公式にもちゃんと書いてあるが、スキャンの際はグレースケールで読み取らねばならない。
だから、つまり、クリスタ公式のアナログ原稿スキャンについての説明をよく読め、とその一言につきる。

線がかすれているのがお分かりいただけるだろうか?

失敗③結局のところパソコンが必要
当方、パソコンを持っていない。いや、あるにはあるのだが、Windows7の10年以上前のパソコンで、Windows10にOSを入れ替えたところ挙動がおかしくなってしまったパソコンしかない。あとは会社のキビキビ動くパソコンはあるが、ドライバーをインストールしたりするのに管理者の権限が必要で色々とややこしい。家で会社のパソコン開けるのもなんか胸くそ悪いし。

それでとにかくパソコンなしで何とかtiff形式で読み取ることはできないかと色々試してみた。うちのbrotherのスキャナーにはメールでデータ飛ばしてくれたり、Googleドライブに直接データ入れてくれたりする機能があって、その機能ならtiff形式でのスキャンを選択できたので、問題は解決されたと思われた。ところが、その機能を使用してのスキャンでは圧縮形式が違うのか、なぜかクリスタ側でファイルを開くことができなかった。おまけに、これは後から気づいたが、その機能を使用してのtiff形式でのスキャンでは、モノクロのスキャンしかできない。つまり、やっぱり線が描いた通りの線ではない。

色々試してとにかくパソコンが無いとスタートラインに立てないのだと諦めがついた。

それで、もう新しいパソコンを買う金などどこにもないので、挙動のおかしくなった10年前のパソコンを引っ張り出して、何とかOSを立ち上げ(立ち上がるまで15分かかる)、設定でほぼ全てのスタートアップアプリとバックグラウンドアプリをオフにした。それまでインターネットブラウザをダブルクリックしてブラウザが開くまで3分かかってたのが30秒ほどに短縮され歓喜した。

ところがその直後、春ちゃん(長男:3歳)がパソコンの電源部分を触り、電源が落ちた。バッテリーはとうの昔に死んでいて、一度交換したのだが、そのバッテリーもすぐ死んだ。しかも電源アダプターの接触が悪く、触ると電源がすぐに落ちる。しょうがなくもう一度電源を入れると勝手に更新を始めて、2時間ほど放置する羽目になった。

更新が終わっていざ、という段で今度は更新ホヤホヤのOSが立ち上がらなくなり発狂する。色々やって何とかOSを立ち上げ(さらに1時間要)、ブラザー公式からスキャナーのドライバーをインストールすることに命からがら成功した。

パソコンから操作してのtiff形式での原稿スキャンならクリスタ側で何の問題もなくファイルを開くことができた。しかし、やっぱり線がかすれるので、これはJPEGとかtiffとかいう問題ではないと分かった。ここでクリスタ公式にアナログ原稿のスキャンはグレースケールで、と書いてあることに気づく。

失敗④グレースケールでのスキャン→モノクロ処理
無事にグレースケールで、tiff形式でのスキャンを終えるも、クリスタ側でファイルを開くと線が明らかにおかしい。なんか、つぶつぶしてる…。調整で何とかするのかと思って閾値やら何やらをいじくってみるもつぶつぶが直らない。

こんなツブツブの線を描いた覚えは一切ないぜ。

完全に詰んだのかと思ったが、色々調べてクリスタでファイルを開く際、コミックの基本表現色のところに「グレー」があることに気づく。

真ん中、基本表現色の部分。

スキャンをグレーで行ってるのだから、開く時もグレーでないといけないのでは、と思い基本表現色をグレーにして開いてみると、やはり!
描いたそのままの線がiPad上で見事に再現されている。変なかすれも出ていない。その後原稿をモノクロ処理しても線はそのままだった。これで勝ったと思った。

しかし、最終的に上記の方法は合っているのかわからず(クリスタ公式ではモノクロでファイルを開けと指示がある)、後にただただめんどくさいことをしているだけだと気づくことになる。

失敗⑤サイズ
改めてクリスタの漫画原稿の上に重ねられた自分のアナログ原稿を見てみると、なんかサイズが小さい。クリスタの原稿用紙内枠とアナログ原稿の内枠が合っていない。

それっぽく見えるけど実は内枠全然合ってない。

再びネットで調べて、製本サイズのところはB4を選んではいけないことがわかった。選ぶのは商業誌用。
これで問題は全て解決されたのだが…。

プリセットからも商業誌用を選択できる。

失敗⑥元の手引きに戻る
一昨日、通勤途中に懲りずにクリスタのことを色々調べていて、トーン化されたアナログ原稿、という記事を見た。

トーン化…どこかで聞いたことがあるような…。

そういえばクリスタの公式にアナログ原稿をグレースケールでスキャンし、基本表現色モノクロで読み取った原稿を開いた後、レイヤープロパティで減色表示にチェックを入れると共に、トーン化のチェックが入っている場合はチェックを外してください、と書いてあった。

何度も何度もクリスタ公式の説明を読んでいたので「トーン化」の一言が引っ掛かった次第である。

会社から帰り早速グレースケールでスキャンしたアナログ原稿をクリスタの基本表現色モノクロで読み取り、クリスタ原稿上でツブツブになった自分の原稿を確認する(前回はここで何とかならんのかと表現色グレーでファイルを開く方面に進んだ)。
そこでレイヤープロパティを見てみると見事にトーン化のチェックが入っているではないか。

効果の左から3つ目、トーン化の部分に色がついている。

Apple pencilでそっとトーン化のチェックを外すと、原稿がアナログで描いたままの自分の原稿になった。

つぶつぶじゃなくなった!変なかすれも出ていない。

なんということだ。初めからクリスタ公式の言うことを聞いておけば良かっただけだったんだ…。


多分、僕と同じような悩みを抱えている人がいるのではないかとこのような文章を書いたが、最終的にお上の言うことに逆らわなければいい、という結論に至っただけだったので、存外悩んでいる人は少ないのかもしれないと書いてみて思った。

最後にお上へのリンクを貼っておく。
tips.clip-studio.com