ソーリーベイベー

一非常勤講師の覚え書きです。天津飯をこよなく愛しています。不定期更新です。

母からのメール

「仏壇の掃除をしようとしたら貴重なものを見つけました。おじいさんには何よりのお供えです」

先日母からこんなメールが来た。
なんのこっちゃと思っていたが、ふと気がついて、思い返してみると少し前実家の用事をこなしに行った際、新美南吉賞に応募した童話作品を仏壇に供えたのだった。そんなことをしたのは初めてで、作品の完成と実家へ行くタイミングが合致したのでたまたまそうしただけだった。新美南吉賞の受賞作品発表は他の賞に比べてめちゃめちゃスピーディーで11月には発表がある。発表が終わればこっそり引き取るつもりだった。わざわざ見つからないようにご先祖様のお名前がつらつらと書かれてある紙の後ろにこっそり隠しておいたのだが、まさかこんな短期間の間に掃除するとは。

母に見つかったのはなんだか気恥ずかしかった。


昨日はまた実家に行く用事があり、珍しく母が焼き肉をおごってやると言うので、多分生まれて初めて母と二人で焼き肉に行った。その作品についての話はしないでよかったし、するつもりもなかった。
他愛もない話が続いてもうそろそろ終わりかなという段になって、何かがきっかけで突然僕の作品の話になった。

母はただただビックリしたと言っていた。僕がそんなことをしているとは夢にも思っていなかったと。
そして、その後に「あんたは文章を書くのがうまい」と言った。感想はそれだけだった。


焼肉は期待していたほどではなかった。それでもお腹いっぱい食べさせてもらって母と店を出ると、あたりはすっかり真っ暗で肌寒く、山には白金みたいな月がかかっていた。満月だった。

作品は見つかってよかったのかもしれないと思った。