ソーリーベイベー

一非常勤講師の覚え書きです。天津飯をこよなく愛しています。不定期更新です。

片手漫画飯のススメ

多分小学生ぐらいの幼き時から、現在までやめられないクセが僕にはある。両親からずっと注意をされてきたので、いつの日からか人前ではしなくなったが、一人の時にはどうしてもやってしまう。

それは「ご飯の最中に、片手で漫画を読みながら飯を食べる」というクセだ。
現在36歳だがこのクセがいつまで経ってもやめられない。

「ご飯を作ってくれた人に大変失礼だ」
その通りだ。
「家族団らんでの食事の一時をぶち壊しにしている」
その通りだ。
「みっともないからやめなさい」
その通りだ。

ぐうの音もでないほどその通りだ。
だからもう人前ではしないし、誰かと食事をする時にも絶対にしない。
だけど一人での食事の時にはこっそりやってしまう。
なぜそんなことをするのか、と聞かれたことがあるが、もちろんたまらなく楽しいからだ。

一体いつからこんなクセがついたのか、正確には覚えていない。しかし、恐らくご飯を食べている最中の幼い自分が「暇だな」と思ったことがそもそもの始まりだったのではないかと思う。今でも職場で一人昼飯を食べるときには同じことを思う。それで幼い自分は漫画を片手に取ったのだろう。
これがハマった。

味覚で楽しみながら、視覚をも楽しませる。つまりダブル。飯中に漫画を片手に取った者には「美味しい」と「楽しい」のダブルの快感が押し寄せてくるのだ!その刺激ったらない。一度体験すれば、その素晴らしさを分かってもらえるかもしれない。


やり方はこうだ。

まず飯を用意する。ここで重要なのはあらかじめ片手漫画飯をキメることが確定している場合、どちらかと言うとメインを漫画にすえるということだ。つまりメシを美味しく食べるために漫画を読むというよりは(もちろん片手漫画飯にはご飯を美味しくする絶大なる効果もあるが)、漫画を楽しく読むためにメシが存在する、と考えた方がいい。逆転の発想だ。そこから導き出される片手漫画飯に最適のメシはインスタントラーメン一択になる。

その理由はまずライトであるということ。漫画飯にステーキやお刺身のような重たい食事は合わない。そのような食事はさすがに味覚を存分に楽しませるべきであろう。片手漫画飯をやってもいいと言われても、さすがの僕も遠慮する。
次に自分で、簡単に、すぐ作れるというところ。誰に気を使うでもなく、精神的呵責が少ない。少ないというより皆無である。
最後にヌードルという形状が片手で食べ物を扱うのに大変適しているような気がすること。これはあくまで気がするだけであるが、しかし昔ながらのラーメン屋、中華料理屋にはよくボロボロになった漫画が置かれてある。歴史的な根拠があるのかもしれない。

そして次に漫画を用意する。カップラーメンの場合、僕なら3冊ほど用意する。食べ終わった後スープの余韻と共にじっくりと漫画を楽しむことができるからだ。

JOJO33巻~35巻はこの日のベストチョイス。

漫画の内容も重たいのはダメだ。シリアスなものよりライトなものを。つまり、漫画、メシどちらにも集中してはいけないということだ。集中しなければ読めないような漫画は片手漫画飯には向いていない。僕は松本大洋の漫画はとても好きだが、例えば彼の作品は漫画飯向きではない。
この日記を書いていて気付いたが、僕は初見の漫画を片手に飯を食べることはあまりないかもしれない。大体は読み慣れた漫画を使う。やはり初見の漫画の場合、集中が必要になるからであろう。
食べているという意識なく食べる、読んでいるという意識なく読む、片手漫画飯においてはそれが一番大事なのだ。読んでいないかのように読める漫画としてはやはり少年漫画がオススメである。ドラゴンボール、幽遊白書、ハンターハンター、みどりのマキバオー、グラップラー刃牙、頭文字Dなどどうであろうか?刃牙などは初見でも十分漫画飯に使えるレベルにある漫画だ。画像ではJOJOを用意しているが、JOJOも第何巻かによって漫画飯に向いている場合とそうでない場合がある。少し上級者向けの漫画と言えるだろう。JOJOなら一番のオススメはサザエさん感覚で読める第4部だ。

飯と漫画が用意できたなら早速始めよう。持ち方は僕の場合次の写真のようだ。もしかしたらいろんな持ち方があるのかもしれないが、残念ながら僕は他の人が片手漫画飯をキメているところをほとんど見たことが無いのでわからない。自分なりのスタイルを追求してほしい。

持ち方はこう!

この持ち方なら真ん中の部分が見えにくいが、僕はそんなことは気にしたことがない。真ん中が見えなくたって大体のことはわかる。僕にはそれで十分なのだ。漫画も小説も大体重要なことだけ分かればいいし、何だったら自分の好きなところだけ読めればそれでいい。そういう読み方をしていると思う。

そのあたりも個人差が出るかもしれない。きっちり全部読まないと気が済まないという人もいるだろう。
僕の嫁さんは漫画を読むのが大変遅く、スラムダンク1冊読むのに20~30分かかるほどなので、なぜそんなに遅いのか聞いたことがある。「もしかして効果音とかも全部読んでるの?」と冗談で聞いたら「そうだよ」と言われてめちゃくちゃびっくりした。漫画の読み方も個人差がある。僕の嫁さんのような読み方をする人には片手漫画飯は向かないかもしれない(その方がいいけど)。

ただ、もしハマる性質の人が一度漫画飯の味を覚えてしまうと後戻りできない可能性がある。僕以外にこんなことを言ってる人はあまり見たことがないが、しかしこんなこと人に大っぴらに言えることでもなく、さらに大体はこっそり一人でやることなので、「実は僕も、私も……」という隠れ漫画飯ジャンキーが世の中には溢れかえっているのではないかと僕はにらんでいる。それほどまでの悪魔的魅力が漫画飯にはあるということだ。

いまだかつて片手漫画飯をキメたことがないという方には、大事なものを失う覚悟が必要かもしれない。十分に注意されたし。