ソーリーベイベー

一非常勤講師の覚え書きです。天津飯をこよなく愛しています。不定期更新です。

神戸「西」ブルベ200km(実質360km)日記~準備編~

9月に入ってなんだか涼しくなった。涼しくなると自転車に乗りたくなる。自転車で誰にも邪魔されないで、どこかへ。それはどんなに楽しいだろう。
自転車で空間という言い方をするのも妙だが、自転車は僕が一人になれる空間だった。どこまでいっても一人だから、自転車はいいんだ。
僕が自転車に乗るとき、世界がずっと自由になっていくような、そんな気がする。


僕の自転車は以前の日記で出てきたGIANT TCR。
yoakenoandon.hatenablog.com
京都の家を出るときに、この自転車に乗ることももうあまり無いかと、置いてきた。
久しぶりに乗りたくなって、この間京都まで行ったついでに様子を見たらチェーンは錆びついていて、さらに空気入れが盗まれていた。自転車盗まずに空気入れを盗むとはなかなか酔狂な奴もいたものだと思ったが、犯人は僕の兄だった、ということが、これまたこの間京都の兄の家に寄ったときに判明した。ロードバイクも無いのに一体何に使うんだろう?ていうかお兄さん空気入れ返して下さい。自転車乗って帰れません。


ロードバイクに乗ったことがある方ならわかるかもしれない。ロードバイクはどこまででもペダルを回していけそうな、そんな気にさせる乗り物だ。
一日で一体どこまで行けるのだろう、そんなことを考えていたのかいなかったのか。ともあれ僕は一日で360kmまでは漕いだことがある。その時の日記が読みたくなって久しぶりに開いてみたらますます自転車に乗りたくなった。
以下は360km漕いだ時の日記。日付は2012年3月25日。今から6年前、弱冠30歳。1万字以上の卒論みたいな日記になっているので二回にわけることにします。なおライト含め情報が色々と古いのはご勘弁下さい。
考えてみたら今はもうスマホがあればコマ図なんていらねえんだな……


以下の記録は、個人的な備忘録と言えるもので、自転車に興味の無い方には丸きりおもしろくない上に、ゲロが出るぐらいに長いので、どうしようもないくらいに暇な方以外はこれから先、お進みになられないことを激しくオススメします。


先日(3月3日)ブルベというものに初めて参加してきました。
帰ってきてから1週間は、自転車なんて見たくもねえよメーン!的状態であったので記録を残そうなどという気は全く起きませんでしたが、3週間経って、何らかの記録を一応残しておきたいという気持ちがフツフツと湧き上がってきたのでここに記すことにします。
また、「オッスおら悟空、これから自転車で長距離の旅にいっちょ出てみっか!」的気分の方にとって、もしかすると何らかの役に立つかもしれないという淡い期待も込めてここに記すことにします。


ブルベとはそもそも200km以上を自転車で走る、長距離自転車イベントのことです。
細かく言うともっと突っ込んだ定義があるのかもしれないけど、要は自転車で長距離走り回ってみようぜ、というのがこのイベントの本質だと僕は思っています。


確か大阪-東京キャノンボールのことを色々調べている時に初めてこのブルベという単語に出会ったのだと思う。
その時は特に意識しなかったのだけど、大阪サイクルイベントに誘って頂いた友人のサトウさんからスポーツエントリーというサイトのことを教えてもらって、そこで自転車のイベントを調べているとすぐにヒットしたのがこのブルベ。
近畿でもやってるみたいでおまけに参加費がめちゃくちゃ安い。長距離を自転車で走るのは好きだし、一度出てみようとすぐに大会にエントリーしてみた。
エントリーしたのは3月3日(土)開催の神戸西200kmブルベ。
エントリーした時はコースのおおまかな概要ぐらいしかわからなくて詳しいことは不透明なままだったけど、「神戸」て書いてあるぐらいだし、まあ近場で楽しめるんじゃないか、という感覚だった。
神戸なら現地まで自転車で行けるし、これはいいイベント見つけたなあ、と喜んでいた。

その後、大会までの間に兄の友人であるほっしゃんとうちで飲む機会があり、「神戸」というのはかなりでかい、明石近辺まで行ってもまだ「神戸」が出てくるんやで、という非常に貴重な話を聞かせて頂くことがあった。
にもかかわらず、僕は…
( ´_ゝ`)フーン.
的な態度で特にその話を気に留めなかった。

ブルベ2週間前になってようやくコースの全体図、及びキューシート(この交差点を右折、といった細かいコース指示のexcel表)がホームページにアップされた。
コースの始点を見てみると全然知らない地名。
親切にも主催者のオダックス近畿さんはブルベのコースをルートラボに載せてくれていたので早速開いてみることにした。
そのコース図及び高低図がこれ↓



( ゚д゚) ・・・
 
(つд⊂)ゴシゴシ
 
(;゚д゚) ・・・
 
(つд⊂)ゴシゴシゴシ
  
(;゚ Д゚) …!?

え…ちょっ!?

始点明石の北やん。
おまけにこの鋸型の高低図はどうよ。
400m級2回超えるてあんた…

試しにルートラボで自宅からブルベのコース始点までのルートを作ってみる。
距離80km

Wow!

仮に自宅からの全行程を全部自転車で行くとしたら360km。
今まで一日で走ったことのある最高距離252km。
でもそれはいとちゃん(ときどきたっちゃん)と二人で走っての252km。

一人で360kmなんてのは未体験もいいとこだ。
おまけに前半30km以降はずっと山岳コース。

この時初めて迷いが生じた。
家の車で現地まで行こうか、あるいは前日明石で泊まった方がいいんじゃないか。
でも諸々の事情で双方とも選択できず、結局自転車で現地まで行って、200km走ってから自宅まで自転車で帰る360kmコースを採ることになった。

ちなみに本人が「自転車で360km」という響きにどうしようもないくらい胸ときめかせ、ワクテカしてしまっていたという事実は君と僕だけの秘密だ。

というわけで前日。
3月3日ブルベ本番の受付開始は午前6時30分からだったので、3月1日の夜は仮眠程度で済ませ、3月2日の午後6時ぐらいから睡眠をとり、3月3日午前1時起床、午前2時出発というスケジュールでいくことに決めた。
3月1日、深夜に家に帰って、寝たのは2日の明け方5時ぐらい。起きたのは2日の8時ぐらい。大体3時間の睡眠で、3月1日はあまり睡眠をとらない、というこの一点に関しては非常にうまくいった。うまくいったのはまさしくこの一点のみであった。

起きてからはダラダラしながらブルベの準備を始める。結局本格的にとりかかったのは午前10時半ぐらい。
ブルベは道路交通法の観点からかベル、ライト、反射ベスト等、様々な装備義務が課されている。
出走前の車検で装備不十分であるとされた場合、この時点でブルベ終了である。
この装備に関して、ほっしゃんにはとてもお世話になった。
特にベルに関しては僕の自転車のハンドル径が非常に太いものであったため、取り付けられるものがなく、めちゃくちゃ困っていたのだが、ほっしゃんに相談したら一発で解決した。

また、ブルベは夜中に街灯の無いところを走り回るのでなるべく明るいライトを2灯以上装備しなければならない(義務付けは400km以上のみ。でもそれ以下でも推奨はされている)。このうち一灯は自転車を買ったときに一緒に購入した安物のライトでいこうと思っていたのだが、電池を交換してから、どうにも調子がおかしい。
ということでこれまたほっしゃんのところで新規購入。
このライト、メインライトを補助してくれればそれでよいと思っていだが、それにしては滅茶苦茶明るく、スーパーサブっつか、もうレギュラーでよくね?的性能をはっきしてくれた。
明石までの行き帰りはこれ一灯で十分だった。

そしてメインのライト。
これはキャノンボールのことを色々調べまくっているときから欲しかったライトを購入することにした。
巨大掲示板2ちゃんねるには自転車板が存在し、結構有用な情報が転がっていたりするのでこれまでも色々と参考にさせてもらってきた。
この板の中にはライトに異常なまでの関心、いや執念を燃やす者がいる。
自転車前照灯スレに巣食う者、通称「ライト沼」の住人達である。
夜間に快適な自転車ライフを送りたいがためにライトを自転車にマウントするのだ、というのが普通の考え方だと思うが、ライト沼の方々はどうも、素晴らしいライトをマウントするために自転車という「台」が存在するのだ、と考えている節がある。つまり主従が逆転してしまっているのだけれど、ここまでイってしまっているライト沼の住人をして、少し前までその明るさ、その汎用性をして神ライトと言わしめたライトが、

Fenix ld20

である。
このライト、いわゆる自転車用ライトではなく、本来は単3電池を用いた懐中電灯である。
実は明るさを求めるのなら懐中電灯を自転車にマウントする方が高性能な自転車用ライトを求めるより明るさ、また値段の観点からも優れているということはもうライト沼の方々にとっては周知の事実のようで、それを証明するかのごとく確か去年の春ぐらいに、雑誌「自転車人」でも様々な懐中電灯が特集されていた。
そしてその特集の中でも第一に紹介されていたのはこのfenix ld20である。
このあたり、もしかすると「自転車人」もライト沼住人の意見を参考にしていたのではないかと勝手に疑っている。
ちなみに現在、単3電池を使ったライトはもはや時代遅れとされている風潮があり、リチイウムイオン電池18650とかいう、やばい臭いのプンプン漂ってくる名前の電池を使ったライトがものすごいらしい。
その性能は一言で爆光、ただひたすらに爆光であるというのだが、さすがにそこまでの性能はいらない。
今回ld20で走ってみて、その明るさに大変感動したのだが、18650を使ったライトはルーメン値でld20の約5倍の明るさ(大体1000ルーメン以上)を持つ。
そんなのおかしいよ…絶対…

ということでld20を購入したのだが、これが届いてみると予想以上に小さい。
現代の懐中電灯ってこんなに小さいのか。まさに手のひらサイズ。
早速自転車に取り付けてみた。



うむ、ライト2灯ってなんかかっこいいじゃないか。

こちらはほっしゃんにつけてもらった神ベル。



乾いた、いい音がする。

さてここまで用意したあとは自転車の空気入れたりチェーンの掃除をしたりして、さらにサイクルコンピューターの電池がもうきれかかっていたのでcateyeのホームページを見ながらゴチョゴチョやってたら大体午後4時ぐらいになった。
ここからブルベで最も必要となる装備、地図の作成に取りかかる。

名古屋に行った時も自分で地図を作っていったのだが、今回は丸きり違う地図を作ることになった。
キューシートのことは先ほど説明したとおり、この交差点で右折、とか文字で書いてあるエクセル表なのだけど、これを分かりやすく図にしたものがある。
通称「コマ図」と呼ばれるもので↓みたいなもの。



交差点名、道路名、始点からの距離、その前のコマ図からの距離が書かれてあって、すなわちサイクルコンピューターを見ながら距離を照合し、コマ図に記されてあるポイントを正確にたどっていくとゴールに行きつくという、地図である。
僕が名古屋行のときに作った地図とは根本的に違っていて全体地図ではなく、直進以外の要所のみを記したまさに「コマ図」である。
本来はキューシートに合わせてこのコマ図を自作しなければならないらしいが今回ブルベを主催するオダックス近畿さんはこのコマ図まで作ってホームページにアップしてくれている。
全体図が無いことに多少の不安を覚えないではなかったが、今回はこのコマ図に全てを委ねてブルベを走り切ることにした。
というわけで早速プリントアウト。

さてこのコマ図、すなわち地図をどのように扱うかということである。
名古屋に行った際、いちいちポケットから地図を出して現在地を確認するという作業は非常に面倒くさく快適ではないことを痛感している。

ブルベに出ている人は地図をどう扱っているのだろう。

色々調べてみると一般的にはA4ぐらいの大きな紙にまとめて3枚ぐらいにして、なんだったらラミネート加工までして、ハンドルの前を通るシフトワイヤー及びブレーキワイヤーにクリップかなんかで留めるというのが主流らしい。
なるほど…しかしハンドルの前にどでかい表があるのは何かちょっと抵抗があるし、写真を見ているとどうも僕の自転車とはワイヤーの取り回しが違うようでこれは不可能だということがわかった。尚も調べていると、カードホルダーにコマ図を収納し、ノートのようにめくりながらコマ図を閲覧していく方法が紹介されてあった。
おお、これなら簡単にできそうじゃないか。
早速100均でタイラップ他様々なものを調達して作り始める。
途中穴を開ける位置や台座との関係から思わぬ苦労をしながら完成したのがこちら↓



お、おぉ…なんかハンドル周りが若干要塞っぽくなっているじゃないか。
それでいてスマート。ロードバイクの機能美をスポイルしてはいない。
んんマーヴェラス!我ながらよくやった。

若干の興奮を覚えながら、一仕事終えたところで風呂に入って寝るか、と時計を見たところ夜の10時。


あ、あれ…?


10時って…もう3時間しか…

どうもあれこれ地図に手を加えているうち、時間が超スピードで過ぎ去ってしまったようだ。ちなみに上記の写真は後日明るい時に撮り直したものであり、その日作業が終わった時には当然辺りは真っ暗になっていた。
午後10時という時間に、やばいような気はしているのだけど前日も3時間ぐらいしか寝てなかったので頭がぼーっとして何が何だかよくわからなかった。
とりあえず風呂に入りに行って、翌日の用意をして寝床に着いたのは11時。
少しでも睡眠時間を稼ごうと朝(てか夜だけど)1時起床から1時半起床に変更した。

が、ここで思わぬことに翌日が楽しみ過ぎて寝れない病が発病してしまった。
小学生の頃からおよそそんなタイプではなかったし、前日もあまり寝てないのだからすぐに寝れるだろうと高をくくっていただけにこれは予想外の展開だった。
逆に前日寝てないから早く寝なければ、というプレッシャーも働いていたのかもしれない。
それでも何とか寝ようと1時間じっとしていると、少しウトウトと眠れそうな感じになってきた……
ところに飲みに行っていた兄貴と親父がワイワイキャッキャしながら帰宅、というデスコンボ。
ばっちり目が覚めてしまった。時計は12時過ぎ。
ここから先は一睡もできず、ベッドでゴロゴロしながら起床予定であったAM1時30分を迎えた。

体調が不安過ぎたけど、まあ行くしかないわな、と自分を励まして午前2時出発。
出発するときにリュックに防寒用のトレーナーと手袋を入れるかどうか迷ったけど、そんなに寒そうではなかったので入れなかった。これは最後まで後悔した。
出発してすぐにコンピューターの表示がおかしいことに気が付いた。
それまで30km/hが表示されていたのに突然0km/hになって、再び突然30km/hに戻ったりする。
電池の不具合かな、と思って明るいコンビニに寄って見てみるもおかしいところは見当たらない。おまけにこのコンビニでサイクルボトル2本を家に置き去りにしてしまったことに気が付いた。
取りに帰ろうか、と思ったけど、もし遅刻するようなことがあってはいけないのでペットボトルで我慢することにした。
コンピューターもとりあえず明石に着いてからにしようと考えて再び走り始める。
千日前をずっとまっすぐ行って弁天町を北に、後はずっと国道2号線。
深夜の2号線は全然車も走ってなくてとても快適だった。
尼崎、西宮、芦屋、結構いいペースで通過していく。
休憩をどこで入れようかな、と考えながら神戸を過ぎていつの間にか須磨へ。
この須磨から明石への海沿いの道は加古川で仕事をしてた時電車で通るのを毎朝楽しみにしていたところだが、深夜自転車で走っているととても寂しい気がした。
早く明るいところに出たい、にぎやかなところに出たら休憩しようと思いながらペダルを回していたが、こんな深夜とも朝方ともつかぬ時間に、にぎやかなところなどどこにもない。
結局ノンストップで明石駅へ。
時刻は…



は…早く着きすぎた。

着いて思ったのはまず、寒い、ということだった。
止まった瞬間に一気に体が冷えてきた。
走行中、ずっとコンピューターのことが気になっていたので、明石に着いたところでまずそれを直すことにする。
コンピューターが正確に作動しない限り開始点からの正確な距離は分からず、すなわちコマ図の意味が全くなくなってしまい、言ってみれば地図の無い状態でブルベを走ることになってしまう。
色々考えあぐねた結果、もしかするとセンサーとコンピューターの電池の入れる順番を逆にしたら直るのではないかと思いついた。
試してみたらドンピシャリ。一番の不安は取り除かれた。
不安が無くなったところでお腹が減ってきたので朝ごはんを食べに近くのすき家に入り、それから時間を潰す方法を考えた。
明石駅からブルベの始点まではまだ15kmほどあるけど、ブリーフィングは7時40分からだから、6時半にここを出れば確実に間に合う。
ご飯を食べた途端に強烈に眠くなってきたこともあって、駅前の漫画喫茶で1時間程仮眠をとることに。
ここではちゃんと眠ることができた。
漫画喫茶を出て、外が明るくなってたのはとても嬉しかったし、なんだかホッとした。
太陽ってのは素晴らしいもんだ、と変なことにとても感心した。
しかしあまりゆっくりもしていられない。
早速明石駅のコインロッカーへと向かい、リュックその他いらないものを預ける。
鍵をトップチューブバッグにしまってスタート地点へ向け明石駅を出発。
軽い登り勾配を40分ぐらいこいで大体7時20分ぐらいにスタート地点に到着した。
途中ダンシングをする度、内腿にトップチューブバッグが当たるのが気になった。
フロントバッグにすればよかったかも。
スタート地点の高塚公園は割と大きい公園だったが近くまで行くと明らかにそれっぽい人達の塊。すぐに受付だと分かった。

長いので二つに分けます。↓続きです。
yoakenoandon.hatenablog.com