ソーリーベイベー

一非常勤講師の覚え書きです。天津飯をこよなく愛しています。不定期更新です。

マーボー豆腐を作った

結婚して、最も変わったことの一つに食生活がある。一人暮らしの時はご飯なんて何でもよかった。大抵は白ご飯と何か一つ料理を作って食べるだけだった。
その料理というのも、もやしを炒めたり、ナスビを焼いたり、うどんをゆでたり、一次的な操作しかしない、およそ料理とは呼べないようなもので、あと自分の作れる料理っぽいものと言えば、幼い頃母から教えてもらった玉子焼きと大学時代バイト先の中華料理屋で教えてもらったチャーハンぐらいだった。
うちには玉子焼き用のフライパンが無かったので、丸いフライパンにクレープみたいにして玉子を焼いて、クルクル巻いただけのものを僕は玉子焼きだとずっと思っていた。玉子焼き用のフライパンなるものがこの世に存在して、何度も玉子を入れては端に玉子を寄せて、という操作を繰り返して玉子焼きを作ることを知ったのは多分25歳を超えてからの話だ。ザッと焼いてクルクル巻くだけで、1分で作れるのに皆なんて面倒なことをするのだろう、とその時は思った。

そんなわけで、結婚してからも朝ご飯に時々そのクルクル巻いただけの玉子焼きを作る。いまだに玉子焼き用のフライパンは持っていない。ご飯が余っている時にはチャーハンも作る。結婚してからは嫁さんに教えてもらって味噌汁も作るようになった。しかしそれ以上の進展はなかった。

基本的に僕には料理や、食べること自体を少し面倒だなと思っている節がある。食の楽しみを解さないわけではないが、ご飯という日常繰り返されることにたくさんの時間と労力をかけることを厭うてしまう。
だから結婚するまでは晩飯を食わないことも結構あった。面倒くさかったからだ。その1時間2時間を別のことに使いたかった。といっても別に高尚なことをするわけではなく、寝るかゲームするかマンガ読むか、酔っぱらうかのどれかだったが。

で、表題のことだが、何故そんなものぐさがマーボー豆腐なんてもの作ってるんだという話だ。
結婚してから片栗粉に興味をもった。僕はあんかけの料理が大変好きだったが、恥ずかしい話、そのあんを作るもとが何であるか知らなかった。確かにバイト先の中華料理屋でも片栗粉をうつところは見ていたし、その白い、水の中に浸かっている不思議な粉を「カタクリ」と呼ぶことも知っていた。なんだったら中華料理屋での自分のまかないに、あんかけラーメンを自分で作って食べたこともある。なのにその白い粉が、市販されている片栗粉とどうしても結びつかなかった。結婚して、嫁さんが水溶きカタクリを料理に使うところを見て、初めてその粉と中華料理屋で使ってた粉が同一のものだと気がついた。僕はアホなんだろうか。

先ほど料理のレパートリーとして増えたのは味噌汁のみだと述べたが、あれはウソだ。実は片栗粉の発見があってから、あんかけうどんも作るようになった。なんのことはない、うどんをゆで、ヒガシマルうどんスープのもとにお湯を入れて(ここまで一人暮らし時代のうどんと一緒)、それに水溶きカタクリを入れるだけのことだ。操作が一つ増えただけだ。もしショウガがあれば入れてみるとすごくおいしい。梅干しもあれば、店で食べるよりおいしいあんかけうどんができる。

つまり、僕は玉子焼きとチャーハンと味噌汁とあんかけうどんを、嫁さんの作る晩飯の合間に織り交ぜながら結婚生活を半年ほど過ごしていた。そんな我が家に任天堂switchがやってきた。スプラトゥーン2ばかりやっていたが、ある時必要にかられてYouTubeをテレビで見たいということになった。しかし、YouTubeを見ることは任天堂switchではできなかった。代わりにニコニコ動画ならswitchで見られることがわかった。
嫁さんはニコニコ動画の存在は知っていたがほとんど見たことはなかったみたいで、僕もかつては頻繁に見ていたがその頃はすっかり見なくなっていた。

それでまあせっかくswitchでニコニコが見られるのだからということで、僕がかつて愛した動画の数々をマイリストの中から嫁さんに紹介することになった。嫁さんは僕の紹介する動画を、目を白黒させながら見ていた。その中の一つに、あのaikoが常に巡回し、目を光らせているパンツマンの動画があった。僕は料理をするのは面倒で嫌いだったが、料理系のマンガや動画を見るのは好きだった。特に初期のパンツマンの、ほとんど何もしゃべらず、黙々と料理を作って、ビールと共に作った料理を黙々と食べる、その様をただただ記録した動画が好きだった。

パンツマンのシュールな、寂寥感溢れる料理動画は、嫁さんの共感をも得て、パンツマンの料理集の中から嫁さんにクリームパスタを実際に作ってもらうことになった。パンツマンの材料で、パンツマンのやり方で作ってもらった鮭とほうれん草のクリームパスタは、びっくりするぐらいおいしかった。今まで見るだけだったが、パンツマンの作る料理はほんとに美味しいんだとその時実感した。

我が家のパンツマンブームにのせて、僕もパンツマンの料理集の中から何か一つ作ろうと思い立ち、多分半年ぐらい前のその日、僕が最も食べたかったあんかけ料理「マーボー豆腐」を作ることになった。
材料は、ひきにく、トーフ、ネギ、ニンニク、ショウガ、豆板醤、鶏ガラスープのもと、しょうゆ、みりん、水溶きカタクリ、あとオイスターソースがあればできる。オイスターソースがあれば、とたった今述べたが、オイスターソースはなくてもいい。あと豆板醤としょうゆとみりんも、もしかしたらなくてもいいかもしれない。
ショウガとニンニクをすりおろして、鶏ガラスープのもと(ウェイパーでいい)をお湯で溶かしたら準備万端。そこから5分でできる。
説明文を書こうかと思ったが、考えてみたら文章で読むよりパンツマンの動画を実際に見てもらった方が早いし分かりやすい。今はYouTubeでも見られるみたい。
食べてみたらこれもやはり美味しかった。マーボー豆腐としては邪道なのかもしれないが、うまければそんなことどうだっていい。それぞれの調味料の量もなんとなくで美味しくできる。作るうちにだんだんとコツもわかってきて、ニンニクとショウガと鶏ガラスープの量は多めの方がモアベターだ。

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昨日作ったマーボー豆腐。作るごとに美味しくなっていってる。自分の才能が怖い。
というわけで、近頃は玉子焼きとチャーハンと味噌汁とあんかけうどんとマーボー豆腐を作るようになった。偉大な進歩だ。